移流方程式(Advection Equation)
流体の学習で登場するのが移流方程式。
この移流方程式は、次のような1階偏微分方程式の形で示される。
これはなんだ??
教科書では、次のような説明が見られる。
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水にインクを落とす。すると、インクは同心円状にジワーっと広がっていく。これが拡散。
もしも、インクを落としたのが流れのある川の水面であった場合、インクは川下へ流れていく。この現象が移流。
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簡単に言ってしまえば、
「移流とは流れに沿った移動」
のこと。
何の移動なのかと言えば、インク液の濃度でもいいし、温度でもいい。何でもいい。数値で表現可能な物理量のこと。
つまり、繰り返しになるけど、移流とは
「流れに沿って物理量が移動する」
という現象のことを言う。
ここまでは、全然難しい話ではない。
左から右への流れがあれば、温度やらインクの濃度やらは、流れに乗って、左から右へ移動する。これが移流。
周りに徐々に広まって、濃度が薄くなる現象は「拡散」なので、今は考えない。拡散は無いものとする。
この「移流」の現象を、方程式という形で記述したものが「移流方程式」。
どうして、こんな形をしているんだろう??
u というのは、何かしらの物理量を表す。繰り返しになるけど、温度だってインクの濃度だって、なんだっていい。
「この物理量を時間で偏微分したもの(第一項)と、この物理量を位置(空間)で偏微分したもの(第二項)の定数倍の和がゼロになる。」
ということを言っている。
うーん。これが、どうして「流れに沿った物理量の移動」を表しているのだろうか。
天下り式に、『「物理量が一定速度で空間を移動する」という場合に、この方程式を満たすから。そういうものだと納得してくれ。』
と説明される(または何も説明が無い)ことが多いけど、なかなか納得いかない。
これ以降、この移流方程式が、なぜこのような形をしているのか説明してみる。
まず、流れの速さは一定で、値 c で表されるものとする。
物理量 u は、時間 t と位置 x によって値が決まるので、この t と x という2変数の関数として
u (x, t)
の形で表される。
この値が、速さ c で流されていくわけだから、
観測点 x, 時刻 t における物理量 u(x, t) の値は、時刻 Δt だけ後には、位置 x+cΔt の場所に現れる。
つまり、
u(x+cΔt, t+Δt) = u(x, t)
という式で表すことができる。
後の計算のために、両方の観測点の位置を -cΔt だけずらすと、次のように表せる。
Δt が十分に小さいとすると、両辺をテイラー展開して以下の式が得られる。
これはつまり、冒頭の式
と等しい。
このようにして、「物理量が一定速度で空間を移動する」という現象を式で表すと、
冒頭に記した「移流方程式」になることを示した。
たしかに、「移流方程式」は、流れに沿って物理量が移動することを表しているのだ。
初期条件(時刻 t = 0 のときの値)が与えられれば、この方程式の解(位置と時間から求まる物理量)を求めることができる。
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・参考
別の説明の仕方。上記のテーラー展開の場所が理解できない場合、こちらの方がわかりやすいかも。
http://www.waka.kindai.ac.jp/tea/shibue/1stOrderAdvectionEquation.pdf
拡散方程式の導出については、こちらが詳しい。
http://www2.kobe-u.ac.jp/~iwayama/teach/kisoIII/2011/chap6.pdf