代数学のお手軽用語集

代数学: 「集合」と「集合の要素間に成り立つ演算」が成す構造についての学問

 

記号

 \rightarrow 集合から集合への写像

 \mapsto 集合の元から集合の元への写像

 

集合の族:集合の集合のこと。「集合の集合」と書くと、パラドクスが生じるようなので、こういう表現をする。

 

ベキ集合:部分集合全体の成す集合。

Xのベキ集合を2^Xと表記する

 

直積集合: 「2つの集合それぞれから1ずつ選んだ要素のペア」をすべて集めた集合

 {a, b}×{X, Y} = {(a,X), (a,Y), (b,X), (b,Y)}

 

単射全射全単射:クラスの女子が、好きな男子にチョコレートをプレゼントする(ただし、女の子は1個ずつのチョコレートしかもっていない)という状況でたとえる。

    単射:2つ以上のチョコをもらう男子はいない(1個ももらえない男子がいてもよい(女子の方が人数が少ない場合))。

    全射:全員の男子がチョコをもらう(複数のチョコをもらう男子がいてもよい(女子の方が人数が多い場合))。

    全単射:すべての男子が1つのチョコをもらう(男女1対1の対応が取れる)。逆写像が存在するための必要十分条件

 

カーネル(核)写像によって0に写される要素の集まり(上の例だと、チョコレートをゴミ箱に捨ててしまった女子の集まり)

 

イメージ(像)写像によって写された先の要素の集まり(上の例だと、チョコレートをもらえた男子の集まり)

 

同値関係: 次の3つの性質を満たすとき、「同じ」とみなす

                    反射性:   x\sim x (同じものは同じ)

                    対称性:   x\sim y なら  y\sim x(左右対称)

                    推移性:   x\sim y かつ  y\sim z なら  x\sim z (仲間の仲間は仲間)

 

同値類: ある集合の中で、「同じ」もの(同値関係が成り立つもの)だけを集めて作った部分集合

同じ都道府県に所属している人を「同じ」とみなす場合、各都道府県のこと

 

剰余類:同値類の中で、特に「割ったあまり」を同値関係に用いたもの

 

商集合:同値類全体の集合

同じ都道府県に所属している人を「同じ」とみなす場合、都道府県の集合のこと

 

代表系:同値類系の同値類(部分集合)を、その代表におきかえた集合

同じ都道府県に所属している人を「同じ」とみなす場合、各都道府県ごとに代表者を決めて、その代表者を集めた集合のこと

 

イデアル:環の特別な部分集合

例:整数に対する3の倍数(3の倍数同士の和・差はやっぱり3の倍数。環の任意の元を掛けてると3の倍数になる)

 

位相空間:集合に対して「開集合の集まり」を定めたもの

集合X=\{a,b,c\}に対して\mathscr{O} \{ \{\}, \{a\}, \{b,c\}, \{a,b,c\}\}は位相を定める

 

密着位相空集合と自分自身のみを含む位相。最も弱い位相。自明な位相

\mathscr{O}=\{\phi,X\}

 

密着位相:すべての部分集合を開集合とする位相。最も強い位相。離散位相

\mathscr{O}=2^X

 

ハウスドルフ空間:ことなる開集合のあいだにちゃんと隙間がある空間。たいていの位相空間はハウスドル空間。

 

ユークリッド変換:図形の平行移動・回転・反転だけを許す変換。形を変えない変換。

 

アフィン変換:図形の形を変える変換だけど、直線は直線のまま。平行な線分の長さの比を保つ。

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ホモトピーかたちに穴があるかどうかを、ロープを放り投げてひっかかるかどうかで調べる理論。

 

ホモロジー:かたちに穴があるかどうかを、かたちの縁(輪郭)に注目して調べる理論。または不変量。(縁に縁なし

 

単体(simplex):2次元の場合は三角形。3次元の場合は四面体。縁と内部を含む。

 

単体複体:単体を交差などなく素直に並べてできたもの。

 

群・アーベル群・環・可換環・整域・体:次の図による分類

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モノイド:「群」から、「逆元の存在」の条件をのぞいたもの

例:プログラム言語でのListとか

 

加群:上の表のアーベル群のこと。加法について可換な群。可換群ともいう。

 

群の準同形写像:掛け算をしてから写したものと、写してから掛け算したものが同じになる写像全単射のときは同形写像

\phi(xy)=\phi(x)\phi(y)

 

 

圏論

 

モノ単射のこと。「m \circ g_1 = m \circ g_2ならg_1 = g_2」が成り立つならm単射。このように、集合の元を見ることなく、射だけを見ることで、単射であると言える。

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下図のようにmが単射でない場合、m \circ g_1 = m \circ g_2であってもg_1 = g_2とは言えない。

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エピ全射のこと。「h_1 \circ e = h_2 \circ eならh_1 = h_2」が成り立つならe全射。このように、集合の元を見ることなく、射だけを見ることで、全射であると言える。

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下図のようにeが全射でない場合、h_1 \circ e = h_2 \circ eであってもh_1 = h_2とは言えない。

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同形射:モノかつエピ(つまり全単射)な射

 

ファイバー積:下図に対して、次のような集合

   X \times _Z Y := \{(x,y,z)|f(x)=z=g(y)\}

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引き戻し:下の可換図式のX \times _Z Yと同型な集合

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普遍性:よくよく考えてみるとあたりまえの性質

 

局所的に小さな圏:一般的な圏

 

始対象:圏Cにおいて、すべての対象Xに対して、ちょうど1つずつの射I→Xが存在するような対象I  (始対象の双対は終対象

 

hom_C(X, Y):圏Cにおける、対象XからYへの射の集まり

 

直積:下図左の関係をもつX,Yに対するP。Aに対して唯一の\overline{f}が決まる。右図は、直積Pは属性X,Yの最小限の情報だけを持つ。という解釈。

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直和:直積の双対。余積ともいう。下図の関係をもつA,Bに対するS。Sに対して唯一のsが決まる。

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Hom関手:射の集まり(Hom)を集合の圏に写す関手。

例:Hom(A, -) と表記されるHom関手は、AからXへの射の集まりを、集合の圏Setの対象(Hom(A, X))に写す。XからYへの射 f を Hom(A, X) → Hom(A, Y) へ写す。共変関手。

例:Hom(-, B) と表記されるHom関手は、XからBへの射の集まりを、集合の圏Setの対象(Hom(X, B))に写す。XからYへの射 h を Hom(Y, B) → Hom(X, B) へ写す。反変関手。

 

忘却関手:群とかだったときにもっていた構造を忘れさせて、たんなる集合の圏に写す関手(忘却関手の双対は自由関手

 

自然変換:関手から関手への射。下図のαがFからGへの自然変換。

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自然変換αは、射の族  (F(A) \xrightarrow{\alpha_A} G(A)) _{A \in \mathscr{A}} であって、圏Aの各射A\xrightarrow{f}A'について、下図が可換になるもの。

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表現:「別の表現」と読み替えるといい

 

カリー化:複数の引数をもつ関数を、引数が1つだけの関数の組み合わせに置き換えること。