ベクトルの内積とは

二つのベクトルa, bがあるとき

ベクトルaとbの内積は次のように表される。

したがって
「ベクトルの内積って何?」
という質問に対しては
2つのベクトルの要素を順番にひろって、それらを掛け合わせたものを全部足したもの
と答えることができる。


ベクトルが2次元または3次元の場合、このようにして求めた値がたまたま次の値と一致する(θは2つのベクトルの成す角)。


(このことを証明を紹介しているWebページはたくさんある。たとえばここ。)

このように、2つのベクトルの要素を順番にひろって、それらを掛け合わせたものを全部足したものが、
たまたま幾何学的な性質を表す「角度」に結び付けられるため、何かと便利に使える。


例えば、物体になされた仕事は「物体に加わる力のベクトルと、物体の移動を表すベクトルの内積」で表される。

上の図の例では、ベクトルFで示される力で、物体がベクトルdで示されるだけ移動した場合、物体になされた仕事はFとdの内積と等しい。
http://17calculus.com/calc11-dot-product.php


例えば、物体の表面の明るさ(単位面積あたりに届く光の量)は、物体の表面の法線ベクトルと、光源へのベクトルの内積に比例する。

http://www.rsch.tuis.ac.jp/~naka/naka/scola/member/chapter5_html/chapter5.html


このように、内積はいろいろな場面で使われるので、その文脈によって「内積とは・・」という説明の内容が異なる。
物理の話、測量の話、数学の話、統計の話、その他いろいろなところで「内積」が登場する。


そのため、異なる複数の場面で内積の説明を受けると
「そもそも内積ってなんだ!?」
と、混乱してしまうことになる。


もういちど繰り返すと、

内積とは2つのベクトルの要素を順番にひろって、それらを掛け合わせたものを全部足したもの。

であって、それ以上でもそれ以下でもない。


2次元、3次元では、たまたま次の関係が成り立つ。

このことは高校で習う。


ところで、ベクトルが4次元、5次元、さらにそれ以上になったら、そもそも「成す角」とは何であろうか?
実は、2次元、3次元の幾何に倣って、4次元以上のベクトルの成す角は次のように定義される。

高校までの数学だと「内積の値がcosθを使って表される」と教わるけど、それとは逆で「cosθの値が内積によって定義されるのだ」と考えるとスッキリする。

cosθの値は2つのベクトルの向きが同じであれば1。反対であれば -1となる。
直交する場合は 0 となる。

つまり、内積を見ることで、2つのベクトルが同じ向きを向いているのか、反対を向いているのか、それとも、まったく無関係の別方向(直交する方向) を向いているのかを知ることができる。

すでに述べたように、人によって「内積は・・・」の説明が異なるけど、私は

内積は2つのベクトルが、どのくらい同じ向きを向いているかを表す量である」
という説明の仕方をしてみたい。

2つのデータ群がどのような関連を持っているかを調べる「相関」も、この内積の値が用いられる。



↓この本は、とてもわかりやすい。読み物のとしても楽しめる。おすすめ。

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