フーリエ級数展開の式を理解する(2)

前回のエントリで、次のようなフーリエ級数展開の公式を紹介した。

そして、この式は次のようなことを言っていることを確認した。

==
関数 f(x) は、様々なcos波とsin波の足し合わせで表現できる。
どれくらいの割合で各周波数のcos波とsin波を足し合わせるかは、数列\{a_n\}と数列\{b_n\}で指定する
==

この数列\{a_n\}と数列\{b_n\}は、フーリエ係数と呼ばれ、次の公式で与えられる。

2ついっぺんに扱うのは大変なので、まずは上のa_nに関する式だけ見てみよう。

式を素直に読めば、
==
数列\{a_n\}のn番目の項は、関数f(x)とcos(nx)を掛け合わせたものを、0から2\piの範囲で積分して、その値を\piで割ることで求まる
==
ということになる。

どうして、このような形をしているのだろうか。
順番に見てみよう。


そもそも、a_nとは、cos(nx)で表されるcos波が関数f(x)にどの程度含まれるかを表す値であった。

つまり、最初の式は次のように読み直すことができる。

==
cos(nx)が関数f(x)にどの程度含まれるかは、「関数f(x)とcos(nx)を掛け合わせたものを、0から2\piの範囲で積分して、その値を\piで割る」ことで求まる
==


さて、少し話が変わるけど、
実は、関数と関数を掛け合わせることで「この2つの関数が、どれだけ似ているか」を表すことができる。

例えば、関数Aと関数Bを掛け合わせた値が大きければ、関数Aと関数Bは似ている
関数Aと関数Bを掛け合わせた値が小さければ、関数Aと関数Bはあまり似ていない
関数Aと関数Bを掛け合わせた値がゼロであれば、関数Aと関数Bはまったく無関係(直交していると言う)。
関数Aと関数Bを掛け合わせた値がマイナスになるのであれば、関数Aと関数Bは正反対の関係にある
(プラスとプラスを掛ければ、プラス。マイナスとマイナスを掛けてもプラス(つまり、似ている者同士を掛け算するとプラスの値)。でも、プラスとマイナスを掛けるとマイナス(似ていない者同士を掛け算するとマイナスの値)という説明でイメージできる)

つまり、関数f(x)とcos(nx)を掛け合わせることで、関数f(x)とcos(nx)がどれだけ似ているかを知ることができる。
これはまさに、a_nが意味する「cos(nx)で表されるcos波が関数f(x)にどの程度含まれるか」を表す指標として使用できそうだ。


今まで書いてこなかったけれど、今回は2\piの周期を持つ関数を対象とするので、この関数f(x)とcos(nx)の掛け算を0から2\piの範囲で積分して「似ている程度」を調べることになる。


これが、冒頭の式の右辺の一部

が言っていることである。


少し話がずれるけど、このように2つの関数を掛け合わせて積分を取る操作を、関数の内積と言う。
ベクトルの内積を関数まで拡張したものだと思えばいい。
ベクトルの内積については、以前に書いたエントリがここにある。
ベクトルの内積とは:大人になってからの再学習
ベクトルの内積も、2つのベクトルがどれくらい似ているかを表すものであった。


さて、a_n積分部分が、「関数f(x)とcos(nx)がどれだけ似ているか」を表すものであることはわかったけれど、その頭部分についている

は何を意味するのだろうか。


これは「関数f(x)とcos(nx)が、あまりに似すぎて、まったく一緒だったとき」に、整合性を取るために必要な調整だと思えばいい。


仮に、関数f(x)がcos(nx)と一致する場合、その内積は次のように\piになる。

フーリエ級数展開の公式は次のように表すことができた。

ここで例えば、「関数f(x)がcos(2x)が、まったく一緒だったとき」、a_2の値は1になって欲しい。
そこで、



を掛けることで、ちょうどa_2の値は1になる。

a_2以外の係数は0になって欲しいわけだけど、計算してみると、みごとにすべての係数がゼロになる。これはsin,cos関数の直交性によるもので、なかなかうまくできている。


改めて、もう一度フーリエ級数展開の公式を見てみよう。

先頭に

がついている。最後に、これについて確認してみよう。

フーリエ係数の公式から

ここで、f(x)が cos(0x)と完全に一致するとき、つまりf(x)=1であるとき

である。
よって、このa_0を2で割ることによって、フーリエ級数展開の公式の左辺と右辺が等しくなる。


フーリエ解析 (理工系の数学入門コース 6)

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