オープンサイエンス革命
久しぶりに読み応えのある、科学の未来に希望を与えてくれるような、ワクワクする書籍だった。
インターネットが普及したことで、言うまでもなく、現在の私たちの日常生活における情報の伝達速度は、一昔前とは比較にならないほど劇的に変化した。
様々なものがオープンになり、誰でも自由に大量の情報にアクセスできるようになった結果、幅広い知の共有が可能になった。
この、知の共有という大きな変革によって、人類の科学の進歩は目覚ましいほどに速度を上げている。
ごく一般の市民が研究活動に参加し、知恵を寄せ集めることで、一人の優れた研究者が成しうる以上の成果を達成することが、多くのプロジェクトで証明されている。
どんなに優れた知識を持つ専門家であっても、あらゆる方面に幅広く深い知識を有するわけではない。特定の狭く深い領域については、他者に知恵を借りた方がはるかに効率がいい。
このような、当たり前の事実に基づく知的共同作業の推進が、インターネットによって初めて可能になった。
しかしながら、その一方で人類の叡智を高めるべく日々努力をしている「研究者」たちは、知の共有にあまりに後ろ向きだ。
インターネット上に公開されている論文は有料であることが多く、研究のベースとなった各種データは秘匿されている。
その理由として、研究者は「論文発表」にのみ動機付けされていて、他者に専門知識やデータを提供することのメリットが無いことが挙げられる。
いくら、知識の共有が全体に益するものであると理解できていても、個々の研究者はデータのオープン化に踏み込むことが難しい。
研究者にデータをオープンにさせる動機づけをするために、論文数だけではないインセンティブを制度の中に組み込む必要がある。
このオープン化の流れは不可逆なものであり、近い将来、きっと誰もが最先端の研究成果に自由にアクセスできるようになるに違いない。
というような内容。
オープンコースウェアの登場などのように、インターネットの普及は、旧来のアカデミアのありかたにも、大きな揺さぶりをかけている。
「Yahoo! 知恵袋」や、「教えて!goo」のような、知恵を共有するプラットフォームがアカデミアの分野でも普及し、「論文を書く」ということだけが評価される仕組みが変化すれば、
研究者の研究の発表の仕方にも大きな変化がもたらされることだろう。
- 作者: マイケル・ニールセン,高橋洋
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2013/03/28
- メディア: 単行本
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