2,235,197,406,895,366,368,301,559,999分の1の確率で起きたトランプの奇跡?

こんな記事があった。

■2,235,197,406,895,366,368,301,559,999分の1の確率で起きたトランプの奇跡
(ロケットニュース24) http://rocketnews24.com/2011/12/03/159042/

記事の内容を簡単にまとめてしまうと、次のような感じ。
「シャッフルした52枚のトランプカードを4人に13枚ずつ配った。そしたら、ある人にはスペードだけ、ある人にはダイヤだけと言った具合に、1人に1つずつのマーク(スート)のカードが集まった。これが起きるのは、確率 2,235,197,406,895,366,368,301,559,999分の1の奇跡だ!」


オリジナル記事

確率の分母には、とてつもなく大きな数字が登場している。
記事の中には、どのようにして求めた数値であるかの記載はないが、おそらく、次のように計算したのだろう。

52!/13!/13!/13!/13!/4! = 2,235,197,406,895,366,368,301,560,000

式の意味を簡単に説明すると次の通り。
(1)52種類のトランプカードを順番に並べる、場合の数は52!通り
(2)最初から順番に数えて13枚ずつ4人に配ったとして、それぞれ同じスートのカードになる場合の数は(13!)^4通り。
(3)4人に、4種類のスートを割り当てる場合の数は4!通り。

(2)と(3)をかけた値を(1)で割れば、目的の「確率」が求まる。
確率の分母は、その逆数なので(1)を((2)と(3)をかけた値)で割ればよい。

通常の電卓では計算できないほどの桁数になるが、Wolfram Alphahttp://www.wolframalpha.com/ )のWebページを使えば、一瞬で計算できる。

ところで、数字をよ〜く見ると、値が1だけ違う(当ブログの計算だと、末尾が560,000なのに対して、記事に登場する数字は559,999)。
これは計算ミスではなくて、元記事から日本語にするときの翻訳ミスのようだ。
元の記事では、「odds of 2,235,197,406,895,366,368,301,559,999-to-one」と書かれている。
つまり、このような現象が起こらない場合と起こる場合の比率が2,235,197,406,895,366,368,301,559,999:1である。というのだ。
日本では、このような表現をあまりしないので違和感があるが、起こる確率が10%の事象に対しては、odds of nine-to-one という書き方をするのだろう。
従って、「確率」と言う表現を使うのであれば「2,235,197,406,895,366,368,301,560,000分の1」と書くのが正しい。
さらに日本語の記事では、この値を「10の28乗分の1」と書いているが、28という数字は桁数であるから「10の27乗分の1」と書くのが正しい。

「楽しいニュース」という位置づけであるだろうから、細かいつっこみは無粋かもしれないが、何でも記事の文章を鵜呑みにせずに、ホントかな?という気持ちを持つことも、大事であろう。
例えば、数学のセンスが多少あれば、「組み合わせの数には階乗の計算が含まれるのだから、値の末尾に9が並ぶのはおかしいな」と直観的に感じるはずだ。

ちなみに、この値は当選確率1000万分の1の宝くじ1等賞に4回連続で当選する確率とほぼ等しい。
(log(52!/(13!^4)/4!)/log(10000000) ≒ 3.9)

あまりに天文学的な数字が登場するので、元の英語の記事には「単にシャッフルし忘れただけではないか」というような、懐疑的なコメントの書き込みが目立つ。皆さんは、これを事実として信じられる?


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