シンギュラリティは近い - 人類を超える知能について

人工知能について少し興味を持ち始めたので、何かと話題の
シンギュラリティは近い - 人類が生命を超越するとき [kindle版]
を購入して読んでみた。

コンピュータサイエンス遺伝子工学、ロボット工学の3つの分野の、指数関数的な進歩によって、
やがて人間の能力を遥かに凌駕する人工知能が実現するだろう、という未来を予測したもの。

そして一度人間を超えた人工知能は、自らの能力を自分自身で改良することで、今までの進歩とは次元の異なるステージに移行するだろう、そしてそれは2040年代に実現すると予想する。

594ページという膨大なページ数で、全部読むにはかなりの時間とエネルギーを必要とするが、要約してしまえば、前述の数行にまとめた通り。

あらゆる分野のテクノロジーの進歩によって、人類がコンピュータと一体化した、希望に満ちた未来が来ることを著者は説くが、
読後の感想としては、なんとも言えない暗澹たるものを覚えた。

確かに、人工知能の研究の発展は目覚ましく、やがては、「知的」と言われる活動でさえも、人間はコンピュータにかなわなくなるだろう。
特に本書に書かれていたわけではないが、
チェス、将棋、クイズ、オセロなどは、もはや人間はコンピュータに勝てない。
そして、自動車の運転や医療分野での判断などでも、コンピュータが人間を超えることは時間の問題だろう。
作詞、作曲、文書生成などの創造的と言われているものも然り。
翻訳、合成音声による発話、画像認識、あらゆる分野において、人間の能力を超えたソフトウェアが登場しつつある。
そしてこれらは、一度作られてしまえば、あとはいくらでも複製ができ、改良されることはあっても、その能力が低下することは無い。
これらのソフトウェア群を1つのコンピュータに全部まとめて入れてしまうことも簡単にできるだろう。

二足歩行ロボットが、ようやく倒れずに歩けるようになったが、このロボットも、人間以上にスムーズに素早く、そして力強く歩けるようになるのも時間の問題だ。


このように考えると、人間以上の運動能力と知能を有する、人間と同様の外観を持つロボットが、世界中に登場するのも、そう遠くない将来かもしれない。

さらに、著者であるレイ・カーツワイルは、人間の脳をスキャンしてコンピュータ内に再現することで、人類はもはや「効率の悪い」有機体の身体から解放されて、
能力をいらくでも拡張できて、複数の「人間」と融合することができて、不死の生命を得ることができると書く。

これを、ユートピアと受け取れるほど楽観的な人は、それほど多くないだろう。
我々人類は、どのような未来に向かって進んでいるのだろうかと、いろいろ悩まされる一冊といえる。

このレイ・カーツワイルは、昨年に Google に加わり、人工知能の研究を推進している。

■ 世界的権威レイ・カーツワイルが、グーグルで目指す「究極のAI」
WIRED.jp http://wired.jp/2013/05/02/kurzweil-google-ai/

Googleは最近になって、ヒト型ロボットの研究をしている企業を多数買収した。
Googleは、この本に書かれている未来を実現することを目指しているのだろうか。