統計のための行列代数
線形代数の学習書の中で、丁寧な説明がわかりやすいと評判の「統計のための行列代数(D.A.ハーヴィル著)」を読み始めてみた。
- 作者: D. A.ハーヴィル
- 出版社/メーカー: 丸善出版
- 発売日: 2012/04/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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数学の教科書は、一見無味乾燥に見えるけど、書くのは人間だから、やっぱり多少なりともその人の考え、価値観なりが反映される。
特に「はじめに」は、著者の言いたいことが明確に書かれる場所だから、ここを読むのは楽しい。
この書籍では「行列」を説明するわけだけど、行列の要素に複素数が含まれる複素行列は扱わない、ということを明言してあって、普通の教科書とはちょっと違うな、という感じを受ける。
さらに
「線形統計モデルを教えるのに固有値と固有ベクトルの結果を用いる必要がないことに気づいた」
とか
「基礎的な行列の結果を証明するのに固有値と固有ベクトルに関する結果を用いることは感覚的に不愉快である」
など、なかなか他書では見かけないような物言いがあって楽しい。
(ここまで固有値と固有ベクトルを嫌っているけれど、書籍の中ではしっかりした説明がある)
内容は、途中を省略することなく誠実に、とにかくわかりやすく、そのために分厚い上下巻の書物になってしまっているけど、詳しい説明が綴られている。
基礎的な説明の後の第2章では、さっそく部分行列、分割行列の説明が入るあたり、なるほど実用的だと感じさせられた。
ある種の問題は行列の問題に置き換えることができる。そして、この手の問題のいくつかが絡み合っている場合、それら複数個をまとめて1つの行列で表現してしまえることが多い。
1つの行列で表現できれば、各種のテクニックを駆使して、たとえば最小二乗の問題などにして、簡単に問題を解くことができる。
そのうえで、行列が複数集まって1つの行列が構成される、という部分行列の考え方は大切だ。