球体のはなし

球体のはなし
もっとも単純で、もっとも美しい形が「球体」であるということに異議を唱える人は少ないだろう。
地球も太陽も巨大な球体であり、無重力状態では水滴も完全な球体となる。

このように自然界に多く存在する球体は、金属などの素材で精度よく作り上げれば、工学的に有用な部品となる。
例えば、自動車1台に数十個も使用されている軸受のベアリングには、いくつもの球体が使用されている。
ボールペンの先端にも球体が使われている。
このように、我々の身近に存在する球体は、どの程度正確な球体なのだろうか?
もちろん、真に正確な球体は存在しない。
現代の技術の粋を集めた球体、つまり球体のチャンピオンは直径相対比1.8x10^(-7)、絶対値20nmである。
これは地球の大きさに換算すると表面の凹凸がわずか5メートルに収まる程度だという、驚くほどの精度だ。
このような精度の高い球体は、海水の比重測定器に用いられたり、はては「アボガドロ数」の決定のために用いられたりするという。
工学の視点から球体をとことんまで深く追求した、類書の無いおもしろい内容に仕上がっている。