そんなわけない『エラー率わずか0.00000625%、驚異のインド式昼食配達システム「ダッバーワーラー」』

ネット上で次のサイトの記事が話題となっている。

■ エラー率わずか0.00000625%、驚異のインド式昼食配達システム「ダッバーワーラー」
http://dailynewsagency.com/2011/05/28/dabbawallah/

エラー率0.00000625% というのは、工学的にはゼロに等しくて、一見しただけで、そんなわけない。と笑い飛ばすべき値だ。ところが、ネット上では思いのほか、この数値を真に受けてスゴイスゴイと称賛する声がある。そのことに驚かされる。

記事を多くの人に読んでもらうためにキャッチーな数字をタイトルに含めただけであろうし、この手の話にいちいち苦言を述べるのも、おとなげない行動のように思えるが、あまりにトンデモな数値なので、「こういうのを真に受けるようでは、どこかで間違った判断をする危険があるよ」という警告をしておきたいと思う。

「こんな数値ありえない」と直観的に感じた人は以下の内容をスルーしてもらって結構。

そもそも、0.00000625%の根拠として「1600万回の処理のうちミス1回」としているが、
これは「ミスが少ない」ではなく「ミスを正しく把握できていない」と判断する方が妥当である。

仮に0.00000625%という値が正しいのであれば、ジャンボ宝くじの1等が当たる確率が1000万分の1で0.00001%であるから、昼食の配達でミスされるよりも、ジャンボ宝くじの1等が当たる確率の方が大きいということになる。

記事の中に
「ウチに来てもらっていたがミスは20年で3回くらいだった」
という例が紹介されているが、その場合は
3回/(25日×12ヶ月×20年)の計算で0.05%だ。
これだけで、タイトルに使われている 0.00000625% の 8000倍となる。もはや、記事の中の数字は、まったくあてにならない。

ちなみに、この0.05%という値は、記事の中で言及されている「アメリカの空港で荷物が紛失する確率(0.0018%)」の28倍に相当する。この程度なら、100歩譲って、もしかしたらありうる値に近いかもしれない(桁が近いという意味で)。

さて、ネットで検索した限りの情報なので正確ではないかもしれないが(少なくとも上記記事よりは正確と思うが)、こちらのブログでは次のように書かれている。

朝日新聞(2004年)によると、郵便公社に持ち込まれた誤配、紛失は普通郵便(230億通)で35万通、書留(3億6000万通)が1000通なので、それぞれ0.0015%、0.00028%である。

これを多いと感じるか、少ないと感じるかは個人の感覚に寄るが、郵便制度が高度に整備されている日本における書留での紛失「0.00028%」が、「配達」という仕組みのエラー率の最低値に近いのではないかと予想される。

ちなみに、デジタル回線での通信時のビット誤り率はおおむね10^-6〜10^-7と言われている。(0.0001%〜0.00001%)。タイトルの「0.00000625%」という数値が、如何にありえない数字であるかがわかるだろう。

※ このエントリがおとなげないツッコミに過ぎないことは自覚している。そして、インドのアナログな配達方式で、膨大な数の配達を実現していることが驚嘆に値することにも同意する。

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