未来技術年表

先日のエントリでは、科学史年表について紹介したが、歴史は遡るものではなく前に向かって進むものであると考えることもできる。
科学技術振興機構が「未来技術年表」というものを公表している。

これは2003年度から2004年度に実施した「科学技術の中長期発展に係る俯瞰的予測調査(デルファイ調査)」をまとめたもので、遠い将来ではなく、2006年から2035年までの近い将来の日本において、予測される未来技術についてまとめたものだ。
未来を予測することは難しいことだが、例えば「2013年 CO2排出量を基準とした自動車税の導入」「2017年 廃車のごみ問題をほぼ完全に解決する自動車のリサイクル技術」のように、かなり具体的な内容が記されている。

コンテンツの見せ方は子供でも楽しめるような工夫がされているが、大人は単に年表一覧を観るだけでも十分に楽しめるだろう。
「科学者が選んだ重要課題トップ100」という年表があるのだが、その中から災害対策に関する項目をいくつかピックアップしてみる。


■2013年

  • 地震検知の全国ネットワークの構築による、50km程度以上離れた地震に関して地震到達前に情報が伝達される防災システム
  • ・建物安全性と財産保全性の飛躍的向上をもたらす免震装置・制震装置

■2014年

  • ・災害監視衛星、通信衛星GPS無人飛行機などを活用して、災害の監視、発生後の災害状況の把握および迅速な対応を可能にする危機管理システム
  • 巨大地震発生時の構造物や地盤の挙動を正確にシミュレートする技術
  • ・高層建物やタンクなどにおける、長周期構造の海溝型地震に対する耐震性評価と補強技術
  • 地震や火山、洪水等の自然現象、あるいは人為的事故に伴う災害リスクポテンシャルを住民が認識、理解し、行政と協力して減災策を構築できるシステム
  • ・地域のコミュニティに基づく防災・福祉活動の能力を向上させるための効果的な情報システム・社会制度構築

■2015年

  • 大規模災害時における効率的な被害把握・拡大予測システムに基づく、効果的な応急対応活動戦略策定技術

■2016年

  • 地震予知に利用される地震地殻変動総合観測装置を大都市、山間部、大陸棚等に均質に密に配置するための技術

■2017年

  • 大規模プラント事故による被害拡大防止、被害回復技術

■2018年

  • 大規模停電や長期断水などによる広域かつ甚大な都市機能マヒの発生時の復旧支援技術
  • 地震発生確率の長期評価手法の確立に基づく、地震リスクマネジメントの一般化

まるで、今回の東日本大震災への対処を目指したような技術の発展が予測されている。
マグニチュード9という激甚地震の発生が、あと10年遅かったら、そして上記の予測が現実になっていたら、被害を小さく抑えられたであろうと思えて残念でならない。

さて、未来予測はさらに続く。
■2020年

  • 商用原子力発電所の廃止措置に対応できる、安全でかつ合理的な解体撤去技術

■2021年

皮肉なことに、最後の項目は次の通り。
■2032年

未来予測を覆すような技術の進展によって、現在の放射性物質による環境への影響が、一刻も早く解決されることを願いたい。


■未来技術年表のWebページ(科学技術振興機構
http://jvsc.jst.go.jp/shiryo/yosoku/index.htm


■関連する過去のエントリ
3D科学史年表 (科学技術振興機構)
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