東大講義録 文明を解く(堺屋太一)

2002年に東京大学で行われた堺屋太一による講義録「東大講義録 文明を解く」。

Wikipedia:堺屋太一

人類の文明の軌跡という、極めて大きな視点の話から始まり、特に日本の近代史についての深い洞察が興味深い。
大学の講義録ということで平易な文体で、各回ごとのテーマが明確で読み進めやすい。

第一章の「少し長めの自己紹介」では、通産省入省時代から、大阪万博開催の仕掛け(役所の運転手を口説くという戦術!)や、沖縄復帰当時の、沖縄企画庁としての活躍ぶりなど、見事な経歴と実績が紹介され、その活躍ぶりに胸を躍らされる。

第二章では、環境資源、エネルギーと人類の文化の発展を絡めた論旨展開がジャレド・ダイアモンドの「文庫 銃・病原菌・鉄」張りのスケールで、時代と場所を超越して爽快に展開する。

いよいよ第三章以降、近代日本の話題となり、第二次世界大戦の前後の政治・経済の話となる。

それにしても、堺屋太一という人物の博識ぶりと、これまでの生きざまには瞠目せざるを得ない。

最近では、オープンコースウェアとして、大学の講義動画が広く公開する動きが盛んだけど、東大生を対象として行われた講義の内容を、このような文庫本で自分のペースで手軽に読めることの価値は計り知れない。

最近の停滞気味な政治・経済を近視眼的に眺めることをやめて、大所高所から幅広い世界と時代にまたがって現代の日本を俯瞰するのにおすすめの一冊。


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