CG MAGIC

ここ最近のCG(コンピュータグラフィックス)の進歩は目覚ましい。
静止画やハリウッド映画に登場するようなCG画像、CG映像は、もはや実写とほとんど見分けがつかない。

下の画像は、1年ほど前にCGプロダクションによって作られたもので、一方が実写で他方がCGによって再現されたもの。

どちらがCGなのか見分けるのは困難だ。

このような実写のような映像を作り出すCGソフトウェアというのは、その中身がどのようになっているのだろうか?

CGを構成する大きな技術は2つ。
1つは立体形状をコンピュータ内部に構築するモデリング
そしてもう1つは立体形状の表面材質や照明から発せられる光から、スクリーンに映る映像を作り出すレンダリング

このリンダリング技術の詳細についてまとめられているのが次の書籍。

CG Magic:レンダリング

CG Magic:レンダリング

CGのレンダリングについて、学術的な内容を日本語で読める貴重な1冊だ。

人間が自身の周りの風景を眼球を通して知覚できるのは、光源から飛び出した光のエネルギー(光子)が物体の表面に当たって反射または透過屈折し、それが目に届くからに他ならない。

レンダリングでは、このような光の挙動をシミュレートすることで、スクリーン上の各画素の色を決定する。

まず、光源から様々な方向に飛び出す光を粒子とみなし、それらの挙動を計算で求める。
しかしながら、あらゆる方向に進む粒子に対して、反射や屈折を含めてすべてシミュレートするにはあまりに膨大な時間がかかるため現実的でない。
実際に眼球に届く光は全体のほんの一部に過ぎない。でも、どの光が眼球に届くのかを事前に知るのは難しい(レイトレーシングという技法では眼球に届く光を逆向きに追跡して求めるが、間接光を扱うのは難しい)。

そのため、限られた数のサンプリングによって、物体表面に届く光を正確に再現することが求められる。

CGにおけるレンダリングの技術とは、如何にして効率的に光の挙動をシミュレートするか、という1点に集約される。
これまでの約30年のCGの歴史の中で、数学と物理学、そしてコンピュータサイエンスの技術を融合させながら、レンダリング技術は目覚ましい進歩をしてきた。

この「CG Magic: レンダリング(倉地紀子著)」は、ほとんど実写と区別できないような映像の制作を実現した近年の技術が、どのようにして実現されているかを知ることができる、貴重な一冊。