塵劫記(じんこうき)の布盗人算(きぬぬすびとざん)
塵劫記(じんこうき)という江戸時代の算数書に記されている次のような問題を布盗人算(きぬぬすびとざん)と呼ぶらしい。
盗賊団の会話が橋の下から聞こえる。盗んできた反物(たんもの)を分配しようとしているようだ。
「7反ずつ分けると8反余るし、8反ずつ分けると7反足りない。どうしたものかなあ」
さて、盗賊は何人で、反物は何反あるか。
塵劫記の中では、解答として次の1行があるだけ。
盗賊は8足す7で15人。反物は15人掛ける8反に7反足りないから113反
なかなか興味深い解答だ。
前半の「盗賊は8足す7で15人」というのはいったいどういう考え方をすれば出てくるのだろうか。
それについての説明は何もない。
念のため、盗賊の人数をx、反物の数をyとして式を立てると、
「7反ずつ分けると8反余る」→ y = 7x+8
「8反ずつ分けると7反足りない」→ y = 8x-7
という2つの式ができて、これを解けば確かにx=15, y=113となる。
しかしながら、塵劫記の中ではこのような方程式から解を導いたわけではなさそうだ。
なにしろ、
「盗賊は8足す7で15人」
としているのだから、実際に行った計算は 8+7=15 だ。
少し考えてみると、これは次のように考えれば合点がいく(考えてみたい人のために続きは少し下から)。
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盗賊団の一員になったつもりで考えよう。
とりあえず不足なく平等に配れるだけ配った結果、8反だけ余ってしまった。
しかしながら、全員にもう一枚ずつ追加で配ろうとすると7反足りない。
(15反あれば全員にもう一枚ずつ配れる)したがって、盗賊の数は8+7=15人。
いかがだろうか。
盗賊の人数を知るためには、最初に7反ずつ分けたという情報すら必要ないということがわかる。
足し算だけで答えが求まるような、特殊な問題設定であるともいえるが、
盗賊団になった気分で考えると、上記の亜種の問題
「布を8反ずつ分けると4反あまり、10反ずつ分けると8反足りない(出典:Wikipedia 過不足算)」
という一般的な問題の方が奇妙な問題設定に見えてくる。
(6人の盗賊が「8反ずつ分けたら4反あまった」という状況で「10反ずつ分けようとしたら8反足りない」などと言うだろうか?)
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