数学の学習:数学問答

北海道大学の石川剛郎先生の問答集。
講義の終わりには「質問書」を書くことを必須としているユニークな講義。

次のページには、受講生から出された様々な質問と、それに対する親切な回答をまとめたPDFファイルが多数公開されている。
http://www.math.sci.hokudai.ac.jp/~ishikawa/mondou.html

膨大な量で、全部目を通そうと思ったら丸一日以上かかってしまうが、
受講生と教師の活き活きとしたやりとりが新鮮で楽しい。
難しい内容はさらりと読み飛ばして、わかるところだけ読むのでもよい。
直接、講義に関係しない質問への回答もたくさんある。例えば「数学序論I」の講義の問答集の中に、

高校までの数学と大学での数学にギャップが生じている原因はどんなところにあるのでしょうか?

という質問には次のような回答がある。

ギャップがあるのが問題ではなく,ギャップがあって当然なのだと思います.特別講義で触れたように,高校までの数学は,たとえると,あくまで,ユーザーの立場の数学です.それに比べて,大学での数学は,メーカーの立場の数学が入ってきます.言い換えれば,「数学の消費者」対「数学の生産者」です.われわれは,その両方の事情を知らなければならない,それが,数学科の皆さんが社会的に必要とされている視点だと思います.数理科学が社会全般で使われている現代では消費者と生産者の両方の考え方を知っている人材が求められている.いつでも消費者としてしか考えられないとすると,それぐらいの人は社会に数多くいるので,皆さんの独自性,希少価値が少なくなるでしょう.また,逆に生産者の視点しか持てないと,数理科学を社会に真に役立てるものにすることは不可能でしょう.そのためには,まず,数学を他の人より深く知らなければいけない.人より高い視点に立たなければいけない.そして,高い視点に立つためには,どこかで飛躍が必要です.ギャップがなければ「飛躍」はありませんね.ぜひ皆さんは,このギャップを糧に,大いに飛躍してください.

教師の数学教育に対する情熱が伝わってくる問答集。
このような教師の講義だったら、きっと受講生も楽しいに違いない。
この問題集を通して、どのような講義が行われたのか想像すると、数学をもっと勉強したくなる。