ガウス関数の手抜き理解

統計でも物理でも画像処理でも、どこにでも出てくるガウス関数正規分布)。


だいたい次のような形の式で表現される。


数学が嫌いだったり、数学アレルギーだったりすると、もうこれだけでダメ。


この式は、「つりがね型」と言われる、次のような曲線を作る。


ちなみに、釣鐘(つりがね)って、こんなの。
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(出典:弘化の釣り鐘 文化遺産オンライン

このガウス関数、あまり難しく考えなくても、だいたい次のような要点だけ理解しておけば、ほとんどの場合には事足りる。





結局、「ガウス関数=つりがね型」と決まっているので、
ガウス関数の式が出てきたときに「どんな形をしているのだろう? 」という疑問に対しては、「どれくらい平べったいか」くらいしか自由度が無い。


つまり、下の緑の数値だけ見て、ここが大きくなると平べったくなって、小さいと上に尖った形になる、ということがわかっていれば、だいたいOK。

マンガでわかる統計学

マンガでわかる統計学

移流方程式(Advection Equation)

流体の学習で登場するのが移流方程式


この移流方程式は、次のような1階偏微分方程式の形で示される。


これはなんだ??


教科書では、次のような説明が見られる。

==
水にインクを落とす。すると、インクは同心円状にジワーっと広がっていく。これが拡散
もしも、インクを落としたのが流れのある川の水面であった場合、インクは川下へ流れていく。この現象が移流
==

簡単に言ってしまえば、

「移流とは流れに沿った移動」

のこと。

何の移動なのかと言えば、インク液の濃度でもいいし、温度でもいい。何でもいい。数値で表現可能な物理量のこと。


つまり、繰り返しになるけど、移流とは

「流れに沿って物理量が移動する」

という現象のことを言う。


ここまでは、全然難しい話ではない。


左から右への流れがあれば、温度やらインクの濃度やらは、流れに乗って、左から右へ移動する。これが移流。
周りに徐々に広まって、濃度が薄くなる現象は「拡散」なので、今は考えない。拡散は無いものとする。


この「移流」の現象を、方程式という形で記述したものが「移流方程式」。



どうして、こんな形をしているんだろう??


u というのは、何かしらの物理量を表す。繰り返しになるけど、温度だってインクの濃度だって、なんだっていい。


「この物理量を時間で偏微分したもの(第一項)と、この物理量を位置(空間)で偏微分したもの(第二項)の定数倍の和がゼロになる。」


ということを言っている。


うーん。これが、どうして「流れに沿った物理量の移動」を表しているのだろうか。


天下り式に、『「物理量が一定速度で空間を移動する」という場合に、この方程式を満たすから。そういうものだと納得してくれ。』


と説明される(または何も説明が無い)ことが多いけど、なかなか納得いかない。


これ以降、この移流方程式が、なぜこのような形をしているのか説明してみる。


まず、流れの速さは一定で、値 c で表されるものとする。

物理量 u は、時間 t と位置 x によって値が決まるので、この t と x という2変数の関数として
u (x, t)
の形で表される。

この値が、速さ c で流されていくわけだから

観測点 x, 時刻 t における物理量 u(x, t) の値は、時刻 Δt だけ後には、位置 x+cΔt の場所に現れる。


つまり、


u(x+cΔt, t+Δt) = u(x, t)


という式で表すことができる。


後の計算のために、両方の観測点の位置を -cΔt だけずらすと、次のように表せる。



Δt が十分に小さいとすると、両辺をテイラー展開して以下の式が得られる。



これはつまり、冒頭の式



と等しい。


このようにして、「物理量が一定速度で空間を移動する」という現象を式で表すと、
冒頭に記した「移流方程式」になることを示した。


たしかに、「移流方程式」は、流れに沿って物理量が移動することを表しているのだ。


初期条件(時刻 t = 0 のときの値)が与えられれば、この方程式の解(位置と時間から求まる物理量)を求めることができる。

マンガでわかる流体力学 (「マンガでわかる」シリーズ)

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トコトンやさしい流体力学の本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)

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・参考
別の説明の仕方。上記のテーラー展開の場所が理解できない場合、こちらの方がわかりやすいかも。
http://www.waka.kindai.ac.jp/tea/shibue/1stOrderAdvectionEquation.pdf

拡散方程式の導出については、こちらが詳しい。
http://www2.kobe-u.ac.jp/~iwayama/teach/kisoIII/2011/chap6.pdf

http://bio-math10.biology.kyushu-u.ac.jp/~sasaki/HP/LecNotes/travelling_wave/travelling_wave_body.htm

論文自動生成プログラムSCIgen(2)

先日のエントリ
論文自動生成プログラムSCIgen
の続き。


SCIgenという論文自動生成プログラムが2005年に開発されて以降、
このプログラムによって自動生成された論文が、査読付きの学会に複数採択されている、という内容を書いたけれど、
そのことを指摘した論文のPDFファイルが公開されていた。


Duplicate and Fake Publications in the Scientific Literature:
How many SCIgen papers in Computer Science?
http://hal.archives-ouvertes.fr/docs/00/71/35/55/PDF/0-FakeDetectionSci-Perso.pdf


タイトルは、なんともわかりやすい。
コンピュータサイエンスの分野で、SCIgenによって生成された論文はいくつ存在するか?」
ということで、具体的な検証方法と、その結果が示されている。


今回の調査で、IEEEの査読付き学会に採択された論文の中で、少なくとも85編の論文がSCIgenによって生成されたものであるとわかったらしい。
それらについての記述が興味深かったので紹介してみる。

・85編の論文は、24の学会に採択されていた。少なくとも24の学会がSCIgenによるニセ論文を見抜けなかった。
・89人の著者が、これらの論文に関わっていた。そのうち63人は1つの論文だけに関わっていたが、中には8編の論文に関わっていた者もいる。
・著者の所属する大学は全部で16大学であったが、そのうちの1つの大学が、全体の4分の1のニセ論文に関わっていた。


与えられた文章が、人間が作成したものか、プログラムで自動生成したものかどうかを判定するWebサービス
http://montana.informatics.indiana.edu/cgi-bin/fsi/fsi.cgi


架空の研究者 Ike Antkare の h-index 操作に関する記述
http://paperdetection.blogspot.jp/2010/08/fake-h-index.html


架空の研究者 Ike Antkare の論文リスト
http://membres-lig.imag.fr/labbe/Publi/IkeAntkare/Ike_AntKare_index.html


オリジナルのSCIgenの別バージョンも作られていて、物理学の論文を自動生成する「SCIgen-Physics」なるものが存在する。
こちらは、より高度な数式を自動生成する(下図)



IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト: 人工知能はクイズ王の夢をみる

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